映画「キリエのうた」ネタばれや感想を解説

10月13日(金)から、日本全国で公開中の映画『キリエのうた』は、監督・岩井俊二と音楽・小林武史による最新の“音楽”映画作品です。

この映画は『チイファの手紙』(2020)、『ラストレター』(2022)、そして『Love Letter』(1995)と同じく、岩井俊二の監督作品です。

映画では、アイナ・ジ・エンドがキリエ役に初主演し、松村北斗(SixTONES)が夏彦役、黒木華がフミ役、広瀬すずがイッコ役を演じます。

『キリエのうた』は、4人の男女が苦難に立ち向かいながらも、13年間に渡る出会いと別れを繰り返す愛の物語を描いています。

今回は、『キリエのうた』のネタバレや感想を解説していきます。

まだご覧になっていない方は、ネタバレが含まれているので一度ご覧になってから読むことをおすすめします。

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目次

『キリエのうた』のあらすじ

東京、2023年。

路上で「キリエ」として歌うことができるが声を上手く発せない「るか」という女性がいました。

ある日、彼女は路上で歌っていると、感動した派手な女性「イッコ」に出会います。

イッコは彼女を食事に誘い、自分の家に泊めることにしました。

翌朝、るかはイッコがかつての高校時代の友人で先輩だった真緒里だと気づきます。

真緒里は高校卒業後、都内の大学に進学するはずだったが、母の恋人で学費を支援してくれるはずだった横井が姿を消したため、夢を諦めてしまったと語ります。

今は過去と本名を捨て、「イッコ」として生活しています。

真緒里はマネージャーも事務所にも所属していないことを話すと、るかは彼女にマネージャーをやってあげようと提案します。

 

時は2018年、北海道帯広。

真緒里はカラオケ屋でバイトを始め、高校卒業後4年間続けました。

その後は母のスナックを手伝う予定でした。

しかし、学費を支援する予定だった横井が姿を消したため、大学進学の夢を諦めていました。

夏彦という家庭教師が訪ねてきましたが、真緒里はそれを受け入れず、自分の運命を変えようと考えるようになります。

彼女は夏彦の指導のもと、都内の大学進学を目指し始めました。

夏彦が彼女の部屋でアコースティックギターを見つけ、その演奏と歌を披露します。

また、彼は真緒里の高校に通っている「小塚路花」と呼ばれる女性に接触してほしいと話しました。

後日、真緒里は路花に友達になるよう申し出ます。

 

東京、2023年。

「キリエ」の名で知られる真緒里は、路花に青色のライブ衣装や高価な機材をプレゼントしました。

彼女は自らの路上ライブで投げ銭を務めた結果、「キリエ」のパフォーマンスは大きな好評を博しました。

しかしその後、真緒里の現在の住まいの家主である元恋人が別の女性を家に連れ込んだことをきっかけに、真緒里と路花は新しい住まいを探すことになりました。

彼らはラブホテルに泊まることになり、その時に真緒里が「『キリエ』ってどういう意味?」と尋ねると、路花は「お姉ちゃんの名前」と答えました。

後に、路花は真緒里の知人でありIT会社の社長である「ナミダメ」こと波田目の家に一時的に滞在することになりました。

路花と真緒里はさまざまな活動を続ける中、路花は音楽プロデューサーである根岸と対面しました。

根岸は路花に「ここで歌ってみてよ」と挑戦を促し、彼女は素晴らしい歌声を披露し、拍手喝采を浴びました。

「キリエ」の音楽活動は成功を収めていましたが、ある時、真緒里が「温泉に行ってくるから」と告げ、スマートフォンを残して突然姿を消しました。

再び一人で路上ライブを行う路花でしたが、そこにギタリストとして活動する「風琴」が現れました。

彼は「キリエ」が会った路上ミュージシャン「松坂珈琲」を通じて彼女の存在と歌の才能を知り、オーディションを受けるよう頼みました。

そして、彼は「キリエ」のライブで演奏を担当するようになりました。

 

2011年、大阪。

声を発することのできない少女は家がありませんでした。

彼女は古墳の近くで夜になると高い木に登り、一人で過ごしていました。

ある日、少女は路上ミュージシャンの「御手洗礼」と出会い、彼から歌を学びます。

声を出せないが歌は歌える少女は御手洗のライブに参加し、その歌声は観客に喜ばれました。

しかし、警察に通報された御手洗が捕まり、少女は再び一人になりました。

彼女は以前訪れた「子ども食堂」で目にした礼拝堂で天を見上げながら涙を流しました。

一方、教師の風美(演:黒木華)は生徒から少女のことを聞き、夜に彼女を探しに行きます。

少女を見つけ、家に連れて帰りました。

少女が眠った後、風美は彼女のランドセルを調べます。

そこで彼女の名前「小塚路花」を知り、電話番号も見つけます。

風美はその番号の市外局番が宮城県石巻で使用されるものだと知り、SNSで探してみると、東日本大震災に関する投稿で「小塚希(キリエ)を探しています」という投稿を見つけました。

 

『キリエのうた』のネタバレ

出典:キリエのうた公式>>

2018年、北海道帯広。

真緒里は都内の大学に合格し、その祝いの席で路花に自身の父が遺したギターを譲りたいと告げました。

夏彦に感謝の言葉を述べた後、夏彦は路花について真緒里に語りました。

彼女の本当の妹ではなく、路花の母と姉は震災の津波で亡くなっていたことを告げたのです。

 

2011年、大阪。

風美はSNSの投稿から、路花の姉である小塚希に関する情報をつかみました。

彼女は「ナツ」こと夏彦に連絡し、彼と直接会うことに成功しました。

夏彦は被災した経験があり、進学を諦めて現在は被災地のボランティア活動を行っていました。

また、路花が声を出せていた理由について、夏彦は自分が大阪の大学に進学することを知っており、姉である希も大阪にいることを考えたからだと説明しました。

夏彦は希との結婚の約束について話し始めました。

 

2011年、宮城県石巻。

夏彦は高校時代、希との交際を始めたこと、彼女が妊娠したこと、そして受験勉強に集中できなかったことを明かしました。

彼は希との関係に悩みつつ、大阪の大学に進学する決断をしました。

 

2023年、東京。

路花は根岸からメジャーデビューを目指す勧めを受け、波田目の家に戻ると警察からの連絡で真緒里に関する驚くべき情報を知らされました。

彼女が結婚詐欺の常習犯だと告げられ、波田目からも自身も被害者であると指摘されました。

波田目は彼女を攻撃しましたが、路花は自分の行動で真緒里を救える可能性を考えて抵抗を止めました。

最終的に、波田目は路花を去るように言いましたが、彼女はパニック状態に陥り、姉を呼ぶように泣き叫びました。

 

2011年、宮城県石巻。

出典:キリエのうた公式>>

3月11日、石巻の高校に通う希は夏彦との再会を心待ちにして、学校を早退して自宅へ戻りました。

彼女が風呂に入っている最中、夏彦は重要なことを告げようとしていましたが、その直前に地震が襲いました。

地震がおさまった後、希は路花を小学校から保護しようと自転車で向かいます。

夏彦は避難を促しましたが、希は小学校が高台にあり、避難所に指定されていることを理由に、夏彦の勧めを断りました。

小学校に到着するも、路花や母親の呼子を探しましたが見つかりません。

希は家族が通っていた教会にいるのではと考え、再び自転車を走らせました。

夏彦は再び避難を勧めましたが、希は道中で路花を発見し、電話を切ってしまいました。

その後、電話が通じなくなりました。

その夜、両親が無事帰宅する中、夏彦は希を探しに行きましたが、見つけられませんでした。

 

2023年、東京。

出典:キリエのうた公式>>

路上ライブを続けていた路花は真緒里の行方を追う刑事たちに連行されました。

夏彦は身元引受人として事情を話し、路花との再会後に起こった出来事を明かしました。

風美は幼い路花を連れて児童相談所に行きましたが、そこで路花は一時保護されました。

その後、数年が経ち、路花は帯広の高校に進学し、夏彦と再会した後、彼の牧場で働くことを望むようになりました。

だが、児童福祉司の沖津が現れ、路花が里親の家に帰らなくなったことから、路花を連れ去りました。夏彦は彼女を見送り、その後は音信不通でした。

再会後、路花は「キリエ」の路上ライブに参加し、警察の要請にもかかわらず歌い続けました。

2018年の北海道帯広では真緒里との思い出を祈願し、現在は路上で生活しています。

 

『キリエのうた』の感想

路花というミュージシャン名は、キリスト教の文言である「キリエ(Kyrie)」から来ており、その語源はギリシャ語で「主よ」を意味します。

日本では「憐れみの讃歌」としてキリスト教の礼拝で用いられる重要な祈りの文言です。

小塚家の人々の名前にもキリスト教と関連が見られます。

路花の姉である希の名前は「ヨブ記」の主人公・ヨブを連想させ、路花自身の名前も新約聖書の著者である聖人・ルカと同じ名前です。

このことから、小塚家とキリスト教の関連が深いことがうかがえます。

路花が「キリエ」として活動する際に着用する青色のライブ衣装は、聖母マリアの象徴である青色のマントを彷彿とさせます。

映画では被災後、希が路花を身ごもって母親となることについては具体的には描かれていません。

出典:キリエのうた公式>>

しかし、映画の終盤では、成長した路花が青色のライブ衣装を着ている状態で夏彦を抱きしめる場面があり、これは路花が亡くなった姉・希の「母親」としての祈りや、愛や魂といったものを受け継ぎ、それを歌い続けることを表現しているのではないかと考えられます。

ルカという名前を持つ聖人は絵画の才能に恵まれ、初めて聖母マリアの姿を描いたという逸話があります。

同様に、路花が歌の才能を持ち、人々の前で歌うことで希の母親としての祈りを語り継いでいるのかもしれません。

 

まとめ

出典:キリエのうた公式>>

以上、キリエのうたのネタバレや感想を解説しました。

キリエのうたの冒頭と終盤では、高校時代の路花が友人の真緒里と一緒に雪景色を楽しんでいました。

彼女は小田和正作詞・作曲の「オフコース」の名曲『さよなら』を口ずさみ、その歌詞には「愛したのはたしかに君だけ そのままの君だけ」という一節がありました。

この瞬間、路花は歌詞を真緒里に向けて歌いながら彼女を見つめていました。

また、祠でのお祈りの際、路花は真緒里と一緒にお祈りをしましたが、お祈りの内容を彼女には明かしませんでした。

これらの出来事から、路花にとっての「そのままの君」は恐らく真緒里であり、路花はおそらく祈りの中で「真緒里と一緒にいたい」と願ったものの、真緒里が都内の大学に進学を望んでいたため、それを伝えられなかったことが、路花の本当の思いを物語っているように思えます。

路花は「近づけば近づくほど遠ざかり合う力が働く」という世界の真理に振り回されており、それでもその力に立ち向かう手段として「歌」を選んできた可能性があります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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