デンマークとオランダのホラー・スリラー映画『胸騒ぎ』は、第38回サンダンス映画祭で初披露され、血も凍るような恐怖と称され、今年最も不穏な映画として注目を集めました。
デンマークのアカデミー賞であるロバート賞では11部門にノミネートされ、第41回モリンス・デ・レイ・ホラー映画祭では最優秀映画賞を獲得し、第26回富川国際ファンタスティック映画祭では最優秀監督賞が授与されました。
本記事では、映画「胸騒ぎ」のあらすじやネタバレ考察を紹介していきます。
映画「胸騒ぎ」のあらすじ
イタリアのトスカーナでの休暇中、ビャアンとルイーセとその娘アウネスは、オランダ人の夫婦パトリックとカリン、そして彼らの息子エイベルに出会います。
エイベルは舌が生まれつきない先天性の無舌症だということがわかりました。
ビャアンとルイーセはパトリックとカリンとすぐに意気投合し、オランダの彼らの家に招待されることになります。
ビャアンとルイーセはその招待を受け、オランダ人夫婦の家に滞在することにします。
しかし、到着してすぐに彼らはパトリックの態度に驚きます。
彼はアウネスに対して虐待的であり、ビャアンとルイーセにも横柄な態度をとります。
特にルイーセがベジタリアンであることが分かると、パトリックは批判的になります。
外食の際には全額をビャアンに支払わせ、帰りの車では大音量で音楽をかけながら酔っ払って運転します。
そして、ルイーセがシャワーを浴びている間にパトリックがバスルームに入ってくるという出来事もあります。
最後には、夫婦が知らない間にパトリックが裸のままアウネスと同じベッドで寝ていました。
この状況にビャアンとルイーセは我慢できなくなり、家を出ることにします。
しかし、途中でアウネスが彼女のウサギのぬいぐるみを失ったことに気付き、引き返したいと主張し、その結果、彼らは再びオランダ人の家に戻り、そこで説得されてしまいます。
映画「胸騒ぎ」のネタバレ・あらすじ
映画「胸騒ぎ」のネタバレを含んだあらすじを紹介します。
パトリック夫婦
数週間後、デンマークに戻ったビョルン夫婦は、パトリック夫婦から、オランダの人里離れた別荘に訪ねることを誘われます。
普段の日常に飽き足らないビョルンは、この機会を利用してルイーズに冒険的な旅に出ようと説得します。
8時間のドライブの後、笑顔で迎えてくれたカリンに挨拶を交わし、別荘に入ります。
しかし、共同生活を始めて2日目には、パトリック夫婦の様々な行動に違和感を覚えます。
菜食主義であるはずのパトリック夫婦が肉食を強要し、カリンのさりげない悪口、パトリックの息子アベルへの怒りなど、何かがうまくかみ合わない感覚があります。
カリンとパトリックはビョルンとルイーズを夕食に誘い、楽しみに着替えました。
しかし、カリンはベビーシッターのムハジドにアベルとアグネスを預けて夕食会を計画していました。
これに対し、ルイーズは違和感を覚え、腹を立てました。
夕食が始まると、パトリックはルイーズの菜食主義に異議を唱え、夫婦が酔っ払ってキスをする姿を見せました。
ビョルン夫婦は困惑し、さらにディナー代を支払わされました。帰りの車の中では、パトリックは飲酒運転をしてルイーズを激怒させました
ルイーズがシャワーを浴びている間、パトリックは黙ってバスルームに入り、歯を磨きました。
夜、パトリックは廊下の窓からビョルンとルイーズの性行為を覗きました。
その間、アグネスが泣いていたが、パトリックは無視し、自分たちの部屋に連れて行ってしまいました。
家から逃げ出す
性行為の後、ルイーズはアグネスを探しに行き、裸のパトリックとカリンが寝ているベッドで見つけ、連れ出しました。
ビョルンを起こして「今すぐに家を出よう」と言い、一家は逃げ出しました。
アグネスはお気に入りのウサギの人形「ニヌス」がないことに気づき、一度はあきらめるように伝えられました。
ビョルンは冷静になり、運転席の下で人形を見つけた後、一度パトリックの家に戻り、ちゃんと説明して帰ることにしました。
帰宅後、パトリックとカリンは戸惑っていましたが、ビョルンとルイーズが滞在中に感じた不快なことを率直に伝えたことで、4人は和解し、1泊することになりました。
この時、カリンは謝罪しつつも、なぜアグネスが彼らのベッドで寝なければならなかったのかについてルイーズに問いただし、自らの負い目を利用しました。
解放のための叫び
ルイーズはカリンの庭仕事を手伝い、ビョルンはパトリックと車で出かけました。
二人きりになった瞬間、ビョルンはパトリックの優しさに触れ、自分の感情を抑えて家族を優先することについて説明しました。
そして、パトリックに連れられてビーチで「解放のための叫び」の練習をしました。
感情の解放によって深まったビョルンとパトリックの絆は、一緒に酒を楽しむことでさらに強まりました。
夕食の準備中、ルイーズが指を切ってしまいました。
処置をする最中、パトリックがトスカーナで初めて会ったとき、医者だと嘘をついていたことが明らかになりました。
ディナーの後、アグネスとアベルが一緒に練習してきたダンスを披露しましたが、その際、パトリックはアベルがミスをしたことを理由に必要以上に罵倒し、アベルは泣いてしまいました。
我慢できなくなったビョルンは、パトリックやカリンの息子アベルに対する彼らの態度について口論になりました。
真実
その晩、ビョルンは子供部屋からアベルのうめき声を聞きましたが、パトリックが訪れると、突然声が止みました。
疑念を感じたビョルンは、明かりのついていた別棟を訪れます。
そこには壁中に貼られた多数の家族写真がありました。
そして、その写真にはパトリックとカリンが、他の家族と同じように休日を楽しんでいる様子が写っていました。
しかし、その家族が殺害され、その子供たちが彼らの子供のように扱われ、さらに別の旅行者の家族が同じ運命をたどっていることが示唆されていました。
ビョルンは、ルイーズとアグネスを起こしに行くと、プールでアベルが溺れているのを発見します。
手を差し伸べるものの、救うことができず、絶望した彼は家族を連れて逃げようとします。
しかし、車が故障してしまい、近くの家に助けを求めますが、誰もいませんでした。
車に戻ると、ルイーズとアグネスがいなくなっていました。
そこにパトリックとカリン、そしてルイーズとアグネスが乗った車が現れます。
パトリックは「車に乗れ」と命令し、ビョルンに家族を助けてほしいと懇願するも、パトリックは無表情で「大丈夫だ」と答え、車に乗り込んでしまいます。
ルイーズは彼らの悪事を知らずにいましたが、不穏な雰囲気に気づき、ビョルンを黙らせるためにパトリックに服従させられました。
ラスト
車を停めた後、待ち構えていたムハジドが現れてルイーズを制圧し、パトリックはハサミでアグネスの舌を切り取りました。
ムハジドがアグネスを抱えてどこかへ連れ去ります。ビョルンとカリンはショックを受け、混乱しますが、パトリックとカリンは無表情で車を走らせ、人気のない道路で車を停め、二人を裸にして窪地に向かわせます。
二人は死を覚悟し、抱き合い、パトリック夫婦から激しい投石を受けて命を落とします。
死んだ夫婦を見て、パトリックとカリンは静かに肩を寄せ合います。
後日、人気のある避暑地で、舌を切り取られたアグネスがパトリック夫婦の車に乗り込み、うなだれています。
映画「胸騒ぎ」の考察
「胸騒ぎ」は、家族の一見平和な休暇が、次第に恐ろしい現実に変わっていくサスペンス作品ですね。
この映画は、何が起こるのか予測できない展開と、キャラクターの心理描写が巧みに組み合わさっています。
まず、ビャアンとルイーセがオランダのパトリック夫婦と出会った時点から、不穏な雰囲気が漂っています。
パトリックの振る舞いや家族に対する態度には、何かがおかしいという兆候があります。
そして、徐々にその兆候が現実化していきます。
ルイーセのベジタリアンであることに対するパトリックの批判や、酔っ払い運転、家庭内の不穏な出来事など、登場人物たちの行動や状況が緊迫感を高めます。
物語が進むにつれて、パトリック夫婦の真の姿が明らかになり、その恐ろしさに驚かされます。
特に、アグネスの舌を切り取るという残忍な行為は、観客に衝撃を与えるでしょう。
そして、結末でのビョルンとルイーセの悲劇的な運命は、この物語の締めくくりとして非常に効果的です。
彼らがパトリック夫婦によって無慈悲に殺される場面は、観客の心に深い印象を残すでしょう。
「胸騒ぎ」は、家族の平和な休暇が恐怖と絶望に変わる過程を描き出し、観客に強烈な印象を残す作品と言えます。
映画「胸騒ぎ」感想
映画「胸騒ぎ」は、そのタイトル通り、観る者の胸を高鳴らせる物語です。
物語は主人公・由美が日常の中で奇妙な出来事に巻き込まれるところから始まります。
冒頭から不安定で、どこか不穏な空気が漂う演出は、観客の注意を一瞬たりとも逸らしません。
この映画は単なるスリラー映画ではなく、人間の心の闇と光の両面を描き出した心理劇でもあります。
特筆すべきは、映像美と音楽の融合です。
暗い部屋に差し込む微かな光、音もなく動くカーテン、そして静寂を切り裂くようなピアノの旋律。
これらが組み合わさることで、観る側はまるで主人公と一緒にその場にいるような錯覚を覚えます。
特にクライマックスシーンでは、由美が自分自身の内面と向き合う瞬間が描かれますが、その演技力は圧巻で、胸を締め付けられるような感情が押し寄せます。
ストーリーは一筋縄ではいきません。
観客は終始「何かがおかしい」と思いながらも、その正体を突き止めることができません。
この緊張感はラストまで続き、最後に明かされる衝撃的な真実が、さらに観る者の胸騒ぎを煽ります。
結末に関しては賛否両論があるかもしれませんが、それもまたこの映画の魅力。深い余韻を残し、観た後もしばらくその世界観に浸ることになるでしょう。
映画「胸騒ぎ」面白いポイント
ポイント1:不気味な日常の崩壊
映画の冒頭、由美の穏やかな日常が描かれます。
しかし、微妙に「何かがおかしい」という違和感が観客を襲います。
例えば、時計の針が逆回転するシーンや、誰もいない部屋から聞こえる足音。
こうした細やかな演出が観客の不安を掻き立て、先が気になって仕方がなくなるのです。
ポイント2:緻密に描かれる心理描写
由美の心の揺れ動きが、彼女の表情や仕草を通じて細やかに描かれています。
特に中盤、由美が「胸騒ぎの原因」と向き合う場面では、彼女の動揺や葛藤が手に取るように伝わり、思わず感情移入してしまうでしょう。
ポイント3:視覚と音響の絶妙な演出
映画を通して印象的なのが、視覚効果と音響の巧みな使い方です。
暗いトンネルに響く足音や、不意に切れる静寂。
そして突然現れる強烈な光のコントラストが、観る者を現実と非現実の狭間に引き込む力を持っています。
ポイント4:複雑に絡み合うストーリー
表向きは単純なミステリーに見えますが、物語が進むにつれて、多くの伏線が張り巡らされていることに気づきます。些細なシーンやセリフが後々重要な意味を持つ展開には思わず唸るでしょう。
ポイント5:余韻を残すエンディング
最後のシーンで明かされる真実により、観客は新たな視点で映画全体を振り返ることになります。
この「答えが分かってももう一度見たくなる」感覚が、映画「胸騒ぎ」の最大の魅力かもしれません。
映画「胸騒ぎ」口コミ
心理学を研究している身として、映画『胸騒ぎ』には大いに刺激を受けました。特に、主人公が抱えるトラウマと向き合う過程の描写がリアルで、映画という枠を超えた説得力がありました。この映画を観ると、自分自身の心の闇とも向き合わざるを得なくなりますね。
最初はただのホラー映画かと思っていましたが、全然違いました!じわじわと不安を煽る演出がたまらなく、心拍数が上がる感じが癖になりそうです。特にラストシーンの展開には衝撃を受け、何度も見返したくなりました。
友達に誘われて軽い気持ちで観に行きましたが、こんなに引き込まれる映画だとは思いませんでした!特に映像と音楽の調和が美しく、怖いだけでなくどこか芸術的な印象を受けました。もっといろんな映画を観てみたいと思いました。
映画『胸騒ぎ』は、近年まれに見る名作だと思います。伏線の張り方や心理描写の深さ、映像美まで全てが完璧でした。ラストの余韻も計算され尽くしていて、観る者の記憶に深く刻まれる作品です。
普段の仕事に疲れ切っている自分には、映画『胸騒ぎ』が心のデトックスになりました。現実離れした世界観に没頭でき、見終わった後は心が軽くなるような感覚を覚えました。こういう映画にもっと出会いたいですね。
まとめ
出典:「胸騒ぎ」公式サイト>>
以上、映画「胸騒ぎ」のあらすじやネタバレ考察を紹介しました。
いかがでしたでしょうか?
映画『胸騒ぎ』は、デンマークとオランダのホラー映画で、世界各国で公開されています。
また、この映画は胸糞映画とも知られており、18歳未満は閲覧できない内容となっています。
それぐらい内容がダークなものだと言えるでしょう。
スリルを味わいたい方はぜひご覧になってみてはいかがでしょうか?
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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